死刑執行の説明責任
死刑執行が現法務大臣の下で13人目となったと報じられている。13人というかつてない記録的な数の執行を命じた法務大臣として鳩山大臣は記憶されることになるだろう。
今回の執行については、執行の社会的背景がいろいろ取りざたされている。メディアの発言等で見逃されている一つの要素として、国際社会からの死刑執行批判に対する明確な反論という意味があるとも考えられるであろう。
国連人権理事会は去る5月9日に、新たに導入された普遍的定期審査の一環として、わが国の人権状況を審査した。その結果は、5月30日付けの国連人権理事会文書に取りまとめられている(A/HRC/844, 30/May 2008)。この文書は、20頁ほどの短いものであるが、わが国の人権状況について諸外国がどのように見ているかを知る上で興味深い。
同文書の結びには、「結論と勧告」が示されていて、26項目にわたって様々な事項に言及されている。そのうち、多数諸国代表の関心を集めたという点で最も目にとまるのは、死刑制度の問題と警察勾留制度(代用監獄)の問題であろう。
死刑制度については、主としてヨーロッパ諸国の代表を中心として率直な批判と具体的な廃止を求める意見が相次いだ(para.60)。モラトリアム(一時停止)の検討を求める意見(イギリス)、死刑廃止に言及する意見(ルクセンブルグ)、終身刑の導入を求める意見(オランダ)などがあった。ポルトガル、アルバニア、メキシコ、スイスなどもモラトリアムの支持を表明している。なかには、イタリア代表のように、死刑執行を段階的に制限し死刑の対象となる犯罪の数を減らすよう求める意見もあった。
こうした国際社会からの意見は、介入主義に基づくものだとして単純に無視、排斥すべきではない。こうした人権の国際的審査制度は、考え方の異なる諸国間において人権の尊重をいかにして実現していくかを検討するための建設的な対話の場である。わが国もこの制度の設立には賛成し人権理事会の理事国にもなっているのである。
今時の死刑執行は、言葉ではなく問答無用の行動によって直近の国際社会からの公の意見表明に対して答えを示したものである。これでは建設的対話も何もあったものではない。法務省当局は、国内に対してだけでなく、国際社会に向けても、死刑執行について説明責任を真摯に果たすべき責務があることも忘れてはならないであろう。
※関係文書
Human Rights Council, Universal Periodic Review
Report of the Working Group on the Universal Periodic Review
http://lib.ohchr.org/HRBodies/UPR/Documents/Session2/JP/A_HRC_8_44_Japan_E.pdf
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