アスペルガー症候群のハッカーの運命は?米国への引渡をめぐる訴訟
1 ペンタゴンのコンピュータに侵入したハッカーを米国に引き渡すことは可能か?10月9日(金)英国の高等法院は、引渡に対して最高裁への異議申立を最終的に棄却する判断を示した。
2 北ロンドンに住むゲイリー・マッキノン(Gary McKinnon)氏(43歳)は、同時多発テロ以後の2001年から02年にかけて米国国防省(ペンタゴン)や航空宇宙局(NASA)のコンピュータネットワークに侵入してハッキング行為を行ったことにより米国に犯罪人として引き渡されるかどうかの瀬戸際にいる。
3 ペンタゴンなどへのハッキング行為に対して米国は、自国の裁判所において訴追するために英国当局に対して同氏の身柄を引き渡すよう請求していた。英国内務省は、引渡に応じる決定を行ったので、マッキノン氏側は、引渡が不当として争っていた。
4 今回、英国高等法院(High Court)は、マッキノン氏側からの引渡決定に対して最高裁判所(Supreme Court of the United Kingdom, 2009年10月1日設立されたばかり) への上告を棄却した。これによって、同氏に関する申立については、英国の国内的な法的手段を全て尽くしたことになる。最高裁への上告棄却の理由は、「一般的に重要な法律上の問題」を提起していないという点にあるとされた。
4 マッキノン氏は、ただ単にUFOや地球外生命体に関する情報を得るために好奇心からハッキングを行っただけであり、たまたまペンタゴンなどのコンピューターのセキュリティが緩いから侵入できてしまっただけだし、決してテロリストではないと主張している。また、弁護人は、マッキノン氏がアスペルガー障害を抱えるため米国での裁判に耐えられないので、英国において裁判を受けさせるようにと主張している。仮に米国に引き渡されると、最悪の場合60年刑務所で過ごさなければならなくなる恐れがあるとも伝えられている。
5 米英間の犯罪人引渡条約では、自国民も引き渡すlことができるので、このような事態も十分に予想されるところであろう。弁護士は、最終的手段として内務大臣に対する請願とヨーロッパ人権裁判所に本件の審理を付託することにしていると伝えている。
6 ヨーロッパ人権裁判所の判例では、かつて米国で殺人を犯して英国に逃亡中に身柄を拘束されたドイツ人の青年(Soering対英国事件)の引渡をめぐる事件で、仮に米国に引き渡された場合には、死刑の宣告を受けるおそれに直面することにより非人道的取扱いを禁止する人権条約(3条)違反であると判示したことがある。仮に、ヨーロッパ人権裁判所において本件が繋属するかどうが同氏の運命の分かれ目となるだろう。仮に申立が受理された場合に、人権裁判所が実質審査に進むのかどうかも注目される。
7 海の向こうの事件ではあるが、日本人のハッカーがわが国領域内からペンタゴンのコンピュータシステムに侵入して米国の国家的利益に損害を与えたならば、米国は日本に対してやはり引渡を求めてくるに違いない。
Times Online
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/crime/article6867844.ece
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
