嘉手納基地内法廷見学
1.7月30日(木)に米軍の嘉手納基地(第18航空団"18th Wing"という)を訪問して、基地内の裁判所の視察をしてきた。
2.我々は、琉球大学の法科大学院の教員と学生を中心として20数名で訪れた。基地のゲートで身分証のチェックを受けてから、基地内の法廷があるKADENA Law Centerと表示された建物に案内された。まずスタッフに挨拶に続いて、基地の概要についての説明を受けた。嘉手納基地は米空軍の最大規模の戦闘部隊である第18航空団を中心とする様々なテナント部隊(陸軍、海軍、海兵隊を含む)の本拠地として位置づけられている。
3. 配布された案内パンフレットによれば、基地の人員は総勢24,300人に上り(空軍の現役
軍人が7000人、その家族が12000人、他軍(1000人)、軍属(1800人)、日本人従業員(3300人)、地元民間契約業者(約1000人)に達する規模であり、司令部のある横田基地よりも遙かに規模が大きく、実戦部隊である。つまりF15 戦闘機が54機、KC135Rストラトタンカー(空中給油機)15機、AWACS早期警戒機1~2機が配備されている。視察の当日も、今話題のF22戦闘機が12機も飛来していて、写真撮影は遠慮してくれとの話もあったぐらいである。(実は滑走路に駐機中の機体を垣間見ることはできた。)
4. 沖縄がいかに実戦に即した世界戦略上の要石であるかが、これらの装備によっても具体的に例証されている。
5. さて、米軍基地内の法廷見学に話しを戻す。基地内の法廷の規模は、小中学校の教室ぐらいのスペースに裁判官席、陪審員席、検察官席、弁護人席、証言台それに傍聴席などが配置されている。
6. 我々一行に対する説明のため、基地内の「法務官」(judge advocate)という法律専門官の方が5人出席された。トップの責任者は当日は不在であったが、それに代わる上級の法務官(中佐)が中心になって全体の説明を受け、個別の問題について刑事、民事、環境問題等の個別の領域ごとに担当法務官の方から説明を受けた。
7. 法廷は、基地が直面する様々な問題を扱っており、兵員の懲戒や刑事裁判だけでなく民事事件、労働事件、環境紛争等さまざまな事項について扱うとの事であった。
8. 彼ら法務官は、米国のロースクールの修了生であって弁護士資格を有している。周知の通り、米国の弁護士資格制度は各州ごとに異なるが、軍隊内では主に連邦法が適用されるので、いずれの州の弁護士資格を有する場合でも、連邦法に関連する法実務には携わることができるらしい。
9. 米国の弁護士資格者は100万人以上いるとのことであるが、米国の弁護士が様々な場面において活動する場が与えられていることを実感した。わが国の弁護士人口は、2万7千人でしかなくても、法科大学院を修了して難関の試験を突破した人でも就職難という壁があることを思うと、彼我の差を感ぜざるを得ない。
10. 個人的に関心のある問題は、基地の外で米軍兵士が行った犯罪に対する捜査権、裁判権の帰属の問題をどのように調整し交渉しているか、というような問題である。そのような在日米軍に関する地位協定の解釈、適用に関わるような問題については東京(横田基地にある第5空軍司令部のことか)が担当しているという答えてかわされてしまった。
11. 実は、7月31日の新聞で報じられたように、30日には、横浜地裁において横須賀基地を脱走した米兵によるタクシー強盗事件の判決が下された。被告人に対しては、求刑通り、無期懲役の判決が下された。この事件にもあるとおり、依然として基地の周辺自治体にとっては大きな問題である。新聞記事によれば、脱走兵の情報公開などの地元自治体から要求が出されているのに対して、米軍側はそれに応じていない。地元の沖縄タイムズではこの報を1面トップで扱っていたように基地周辺の自治体等の関心は高い(朝日の東京版では3面記事で小さく扱われていたにすぎない)。
12. やや横道にそれるが、兵士の脱走にも様々な理由があると考えられるので、事はそれほど単純でもないように思われる(かつて北朝鮮に渡ったという理由で、脱走兵として扱われたジェンキンス氏の話もある)。日本の警察当局は脱走兵の情報を得た上で、その身柄を拘束した場合には、米側にほいほいと引き渡せば済むのか?場合によっては米軍側に簡単には引き渡してよいかどうか疑問が生じる場合もあるだろう。そのような場合に、もし引渡してしまえば、軍法の下で犯罪者として扱われることになり、厳しく処断される恐れがあるともいえる。
13. いずれにしても、わが国の現状においても基地に関して様々の問題を抱えており、未解決の懸案が多々ある。
14. 以上、米軍嘉手納基地視察に関するまとまりのないレポートである。
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